お宿向けコラム

OTAの登録数を増やしても売上も利益も上がらない3つの理由

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私がインターネットで宿泊予約の販売を始めたのは2008年です。当時はまだ業界全体としてのインターネットの市場規模が小さく未成熟だった為、今では考えられないような販売方法が有効だと言われていました。例えば、当時は「宿泊プランの数と売上は比例する」と言われ、それを実践する事で面白いようにインターネットからの予約数が増えて行きました。しかし、現在ではとてもナンセンスな販売方法で、そんな事をしたら売上は急落し、利益も減少してしまいます。

ここ何年か「上司から売上を上げる為に販路を広げるよう指示を受け、OTAの登録数を増やしたのに売上が上がらない。」と言うネット担当者の方からアドバイスを求められるのですが、それは当たり前の事なのです。何故なら先ほどのプラン数の話と同じように、OTAの数を増やせば売上が上がる時代はとっくに終わっているからなのです。

今回は、現在そして近未来のインターネット事情と、新しいホテル旅館のネット販売のあり方をお伝えします。

情報を整理する時代に入っている

情報量が求められた時代

十年一昔。一昔前のインターネットの魅力は「情報量」にありました。知りたい内容がそこにある、「何でも検索すれば知ることが出来る」そこに最大の魅力があったのです。つまり、ホテルや旅館の宿泊プランも多ければ多いほど宿泊検討者にとってメリットがあったのです。今まで雑誌や旅行会社の企画パンフレットでしか宿泊商品を知ることが出来なかったのに、自宅で好きな時間に、しかも無料で様々な宿泊施設のプランが簡単に調べられるようになったのです。そして各ホテル旅館がホームページを持ち始めプランを販売を始めると、その増え続ける宿泊商品を調べやすく、そして比較しやすいように「ポータルサイト」が生まれます。それがOTAです。

OTAは宿泊業界の販売戦略を激変させました。ユーザーはその利便性と有益性から一気にOTAに流れ、そこに巨大な市場が生まれました。そして多くの宿泊施設が顧客を求めOTAに登録していきました。同時にプランも作れば作るだけ売れましたのでどんどん作り、宿泊に纏わる情報がネット上に爆発的に増えたのです。当時は、プラン数の増加は各OTAにとってSEOの優位性やサイト信用力の向上に繋がった為、OTAもプラン数を増やすこと推奨し、OTAの市場希望は拡大を続けています。ここまでは、多くの皆さんが体験してきた事ですので、体感としてお分かりになると思います。では、現在はどうでしょう。

情報は量から質へ

宿泊業界だけではなくインターネット全体の流れを見てみると分かり易いです。現在では多くのユーザーが情報の量より質を求める時代に入っています。様々な「まとめサイト」が生まれ、「メタサーチ」のように情報を整理し、比較するサービスが次々と現れているのは、多くのユーザーが膨大な情報量を自ら処理する事が出来ずにストレスと感じるようになっている証拠です。

現代は多くのユーザーが、情報はあって当たり前という認識に変わっており、その中から自身に必要な情報をだけを知りたいと望むようになっているのです。これは本人が認識しているかどうかは別にして、確実にそのような思考をされています。つまり、10年足らずで「数はスパム、質が宝」の時代に変わってしまっているのです。宿泊業界に例えれば、販路の数(OTA数)やプラン数はスパムになり始めているという事です。

Googleもユーザーへの利便性と有益性向上の為、そのような類似性が高くコピーコンテンツのようなページへの評価を下げてきていますので、遅かれ早かれそのような情報はユーザーの目に触れる機会も少なくなってくるでしょう。「その個人に必要且つ最適な情報を、より早くより分かりやすく」それがGoogleの考えかと思いますし、時代がそれを求めているのも事実だと思います。

売上や利益が上がらない3つの理由

では、上記のような社会の流れを前提として、何故登録するOTAを増やすと収益が上がらないかを見て行きましょう。

コンバージョン率(CVR)が低下する

先程も申し上げた通り、ユーザーの多くは過剰な情報をスパムとして認識しています。つまり、その中から自身が求めている情報や商品を選ぶ事が面倒くさいのです。

「最初に見たOTAだと15,000円だったものが、次のOTAでは20,000円で販売されている。この前、旅行社にあったパンフレットを見た時は18,000円。この価格差は何なのだろう?似たような名前のプランだけれど何か違うのだろうか?料理内容?特典?もしかしたら部屋が違うのかも知れない。」

これが1つの宿泊施設を決める中でお客様の頭の中で起っていることです。しかも、通常宿選びは複数の施設見比べながら行なわれているのです。複数のOTAや旅行社、A旅館とBホテル、○○プランと□□プラン、こんな宿選びは情報過多の現代社会においてストレス以外何ものでもありません。情報過多になると人は思考を停止します。つまり、その行為から離脱するのです。

掲載OTAを増やすという事は、類似性の高い情報をネット上に量産するということです。それは、多くのユーザーにとってストレスとなり、コンバージョン率、成約率を下げてしまう行為なのです。

上位表示が出来難くなる

OTAで売上を上げるポイントはいくつも存在しますが、一番インパクトが大きいのは「掲載順位」です。上位に表示されればされるだけ売上は上がります。しかも一度上位表示を実現すると、そこからは落ち難くなり、売上の時期変動も少なくなるメリットがあります。

OTAは検索順のロジックを公表していませんが、口コミや在庫提供数など様々な要因の中で上位表示に一番インパクトがあるのは「売上高(取扱額)」で間違いありません。取扱額を上げることで確実に表示順は上がって行きます。

下の図は、筆者が経営する温泉旅館の「じゃらんnet」のカルテです。筆者の旅館が所属するエリアには客室数が100室クラスの旅館が複数あり、温泉宿の総数も50~60件あります。その中で客室数が30室強の筆者の旅館が売上1位を続けています。大エリアには政令指定都市もあり、シティホテルやビジネスホテルも多数あります。しかし、その中でも上位に居続けています。事実、筆者の旅館は常に最上位表示されています。

右:エリア内「旅館」ランキング
左:エリア内「ホテル+旅館」ランキング

勘の良い方ならもうお分かりかと思いますが、登録OTA(販路)が増えるということは売上が分散することを意味します。つまり、上位表示が出来難くなるのです。

50室以上の事業規模が比較的大きいホテル旅館の場合は、各OTAの構成比率を検討する必要がありますが、それ以下の客室数の施設であれば、販売するOTAの数を絞り込み意図的に売上を集中させた方が、上位表示が叶えやすく、結果的に増収に繋がります。むやみに販路を広げ売上が分散すると、どのサイトも上位表示をさせることが出来ず、いつまで経っても売上は上がることは無いのです。

インターネットで売上を上げたいになら上位表示が必須であり、上位表示を実現したいのなら、売上を分散させずどこかのOTAに集中させることが必要なのです。

管理コストが増加する

多くのOTAに登録するという事は、その数に比例して管理コストが増えるという事です。「TLリンカーン」「ねっぱん!」「TEMAIRAZU」に代表されるようなサイトコントローラーで予約業務の軽減も可能になっていますが、使用しているPMS(管理システム)や会計ソフト等との相性等もありますので、すべての手間が一元化され取り除かれている訳ではありません。プラン設定から予約受付、各種変更対応から会計処理まで、販売から入金までの一連のプロセスの中では、サイトコントローラーで一括で行なえない部分も少なくありません。つまり、個々のサイトに個別でログインをして行なわなければならない業務も多く存在しているという事です。

例えば経理上、事前決済の内訳を確認したいと思った場合。2つのOTAで50件の実績があった場合は、2つのサイトにログインすればよいですが、10個のOTAで合計50件の実績があった場合は、10回ログインを行いそれぞれ異なった管理画面で情報を確認する必要があります。あるOTAでその月にたった1件しか予約が無かった場合でも同じ工程を踏まなければならないのです。

上記は経理部門で一例ですが、OTA毎の企画やキャンペーンに合わせた特典などを設ける場合は、客室セットやフロント対応など、その都度業務が増加します。もっと言えば、人的な業務が増えると一定確率でミスが発生しますので、顧客満足度の低下にも繋がります。当然その先には、もれなくクレーム対応やリピート率低下というおまけ付きです。つまり、知らず知らずの内に利益が圧迫されているのです。

まとめ

観光産業は成長産業と言われて久しいですが、多くのホテル旅館の経営状況は決して良い状況ではありません。売上を上げ、利益を生み出すにはそれ相応の努力が必要になります。しかし、根拠の無い努力は疲弊や不幸を生み出しますが、売上や利益を生むことは決してありません。その努力を結果に繋げる為には、時代に即した方法・方向で努力を重ねる必要があるのです。

マーケッターの神田正典氏は、時代の流れを「エスカレーター」に例えています。上りのエスカレーターの乗っていれば、努力をしなくても勝手に上がる事が出来るが、下りのエスカレーターに乗ってしまうと、どんなに駆け上がっても上に上ることは出来ないと言う意味です。業界や商品に限らず、時代の流れを捉え、そこに合った戦略を選択しなければ、どんなに努力を重ねても収益を向上させることは不可能なのです。

私達はOTAに限らず、今がどんな時代であり、社会がどんな未来に向かっているのかを理解した戦略を立てなければ、収益の向上は夢のまた夢なのです。また、それを夢で終わらせない為には、日々学びと気づきを重ね、実践を繰り返していく他に方法は無いと筆者は考えます。

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