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【旅館のマナー】仲居さんへの心付けが不要な3つの理由

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温泉旅館に宿泊する際に「心付け」や「チップ」を渡す必要があるか迷われる方も多いかと思います。渡さないと失礼な人だと思われてしまわないか?常識の無い人だと思われたらどうしよう?そんな風に思われる方もいらっしゃるかも知れません。でも、安心してください。結論から申し上げれば、心付けは不要です。

筆者が経営する温泉旅館は平均宿泊単価が約2万円ですが、心付けをお渡しいただけるお客様は1%もいらっしゃいませんし、心付けの有無でお客様を区別する事もありません。今回は、現在の温泉旅館事情と合わせて「心付け」に対する考え方を学んでいきましょう。

「心付け」とは

心付けとは、お世話になる方、またはお世話になった方にお渡しする謝礼の事ですが、現在では、おもてなしやサービスの対価は「宿泊代」「サービス料」として事前に提示されていますので、それ以上の謝礼を渡す必要はありません。しかし、皆さんが悩まれるのは心付けに「感謝の気持ち」と言う意味が含まれている事をご存知だからだと思います。ですが、当たり前ですが感謝の気持ちは「ありがとう」と言う言葉でも伝える事が出来ますし、先にご説明した通りサービスの対価として料金が設定されていますので、心付けを渡さないと宿側に失礼だと言うことは全く無いのです。

「働き方改革」が進む日本のお宿

温泉旅館の仲居さんに心付けを渡すと言う文化が何故生まれたのか正確な事をお伝えする事は出来ませんが、心付けの誕生には「働き方」が大きく関わっているように思います。

以前は、仲居と言う職業は典型的な長時間・低賃金労働でした。筆者が旅館で働き始めた十数年前でも、住み込みで朝から晩まで働いている方もおられました。また、さまざまな事情で住み込みで働らかざるをえない方も多く、宿側も「雇ってあげている」と言う感覚を持っており、とても低い賃金で働いている方も少なくありませんでした。海外ホテルのドアボーイにチップを渡すのと同じように、旅館に泊まったら低賃金で働いている仲居さんに心付けを渡すと言う形が生まれて来たのでは無いかと思います。語弊があるかも知れませんが「仲居さんは、長時間・低賃金労働なのだから」と言う社会的な共通認識の中から、お礼の気持ちとしてお金を渡すようになったと筆者は考えます。逆にそう考えなければ、その他のサービス業において心付けという文化が無いと言うことに説明が付かないように思います。

何れにしても現在では、旅館でも働き方改革が進み、仲居さんの賃金も上がり、夜働いて朝も出勤する「たすきがけ」や、拘束時間が長くなる「中抜け」のような勤務形態も少なくなってきていますし、労働基準法を遵守するのであれば、そのような働き方は法的にも出来なくなってきています。よって、感謝の気持ちとしてお金を渡す必要はもう無いのです。

個人プレーからチームプレーへ

以前は、1人の仲居さんがご到着から朝夕のお食事の用意、そしてお見送りまで、1組のお客様を1人が担当していました。その為、お客様との距離が非常に近く、1泊でそのお客様ととても親しい関係になることも多くありました。しかし、現在の多くの旅館では担当制を止め、スタッフがチームやユニット単位でお客様をおもてなしするような形態へサービスのあり方が変化してきています。

その理由は、お客様がべったりのサービスを好まなくなった事、そして宿側の理由としては、サービス品質を安定させる事が上げられます。担当制の場合、それぞれのスタッフのサービスレベルにお客様の満足度が依存してしまう為、宿全体のサービスレベルが安定しないデメリットがあります。Aさんが担当したお客様はすべて大満足なのに、Bさんが担当するとクレームだらけ。担当制を採用している旅館では、このような事が日常的に発生しており、旅館経営と言う意味では非常に大きなリスクです。Aさんが何らかの事情で退職した場合に営業がなりたたなくなってしまうからです。

心付けは担当していただいた方への感謝の気持ちですので、チームでおもてなしをしていただいた場合には渡す相手も明確ではないですし、気持ちをお金としてお渡しするほど関係性が深まらないのも現実です。

心付けは課税される

担当制を止められているお宿の場合でも心付けをいただく場合もあります。その場合、多くの宿は会社としてそのお金を管理し、売店などで販売している商品をお土産でお渡ししたり、食事中の飲物をサービスするなどのお返しを行ないます。そして、経理的には雑収入として計上しますので、当然課税対象になり、せっかくの気持ちが半減してしまうのです。

先にご説明したように、仲居さんが個人所得として心付けをいただくのではなく、チームで心付けをいただいた場合は分配率などの問題が生じる為、会社が一括で管理するようになり、さらに収入として計上しなければならない為、課税もされます。しかも、旅館は「いただいたからにはお返しを」考え、お土産や必要以上のサービスをしてくれます。もちろん、そんな事を求めてお渡ししているのでは無いですが、日本人ならもらったからにはお返しをしたいと考えるのが普通のように思います。現在の旅館の在り方の場合、心付けは逆にお宿に迷惑をおかけする形になってしまう場合もあるのです。

まとめ:どうしても感謝の気持ちを伝えたい場合は

上記の理由より、基本的には温泉旅館では心付けは不要です。しかし、本当に良くしていただいたり、ご迷惑をおかけしてしまった場合に、何か感謝の気持ちをと考えられる方も少なくないと思います。そのような場合、筆者はこうしています。

  1. チェックアウト時に直接、感謝の気持ちを伝える
  2. 後日、手紙を添えてお菓子を送る

この際に、溢れる感謝の気持ちを伝える為に、誰もが知っているような高級菓子を贈ると、逆にお返しが送られてきてしまいますので、適度な物を選ぶ必要があります。あなたの地元のちょっとしたお菓子、それで十分です。もっと言えば手紙だけでもあなたの気持ちは十分伝わるはずです。

また、どうしても滞在中に心付けを渡したい場合でも、お渡しする場合はチェックアウト時に「お世話になりました。」と、さっとお渡しするのが良いでしょう。到着時にお渡しすると「何かしてくれよ。」と受け止められる場合の方が多いですので気をつけてください。

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