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地域活性化に「よそ者、若者、ばか者」はいらない!?

地方創生や地域活性化の成功法則として、良く語られる「よそ者、若者、ばか者」論。地域活性化のパイオニア的な事例においては、かなりの確率でこの法則が成り立っていましたが、昨今地方創生の動きが全国に広がっていく中、その成功法則に当てはまらないケースが続出しています。以前は地方創生の切り札のように語られる事も多かった「よそ者、若者、ばか者」ですが、現状を鑑みると、以前と今と地域活性化を実現する「人材(人財)」のあり方が変わってきているのではないでしょうか。今回は「よそ者、若者、ばか者」論から、未来の地方にとって必要となる人材について考察してみたいと思います。

「よそ者、若者、ばか者」とは。

そもそも地域活性化における「よそ者、若者、ばか者」の定義とは何でしょうか。 それは「固定概念が無い人」というのが、一番スマートなのではないでしょうか。地域活性化の初期段階、イノベーションにおいては「こういうものだ」という固定概念は大きな障壁となりますので、それが無いということ自体が非常に大きなアドバンテージになります。

脳は基本的に怠け者であり、楽をしたがるようにできている。

出典:脳が冴える15の習慣 記憶・集中・思考力を高める (築山 節 著/日本放送出版協会)

脳は怠ける為に、固定概念を形成します。目の前に現れた事象を過去のケースに当てはめ、類似性を見つけて以前の処理内容に適応させます。そうすることで出来るだけ考えることを避け、怠けるのです。怠ける為に固定概念というデータベースをどんどん構築していくのです。個人差はあるにせよ、人は経験を積むことにより「こういう場合は、こうするべき」という固定概念を形成していく生き物なのです。 元々その地域に暮している方は、その地域での生活が長く、経験が豊富が故に固定概念も多く、客観的視点で自地域を見る事が出来なくなります。それは上記のようにヒトが生物として持つ特性です。

それに対し「よそ者、若者、ばか者」に共通する特徴は、固定概念に囚われず、客観的にモノゴトを考えられると言うことでしょう。客観的にその地域を見ることにより、今迄見つけることの出来なかった問題点を見つけ、それに対しての解決策を立案し、結果的にイノベーションを起せるのです。

イノベーションを成功させるためには、『機会』を正しく見つけ出す必要がある。

出典:ドラッカー名著集5 イノベーションと企業家精神(P.F.ドラッカー/ / 上田惇生)

マネジメントの大家、P.F.ドラッカー氏もこう記しているように、客観的視点での『機会(状況、問題)』の発見がどれだけ重要であるか分かります。

「よそ者、若者、ばか者」の役割

上記に記したように「よそ者、若者、ばか者」は、地域イノベーションを起す為に必要な人財であり、その存在無しには地域活性化は出来ないのではないかとさえ思います。しかし、昨今では「よそ者、若者、ばか者」ではなく、その地域で生まれ育った方達が地域活性化に成功しているケースも非常に多く見られますが、なぜそれは実現出来たのでしょうか。

その答えは「役割」という観点で「よそ者、若者、ばか者」を考えると非常に分かりやすいです。 彼らの役割は「その地域の常識に囚われず、客観的な視点でその地域を見て、『機会』を発見すること。」なのです。先のP.F.ドラッカー氏の言う『機会』の発見、それが役割であり、イノベーションを起す事が自体が役割では無いのです。その地域で生まれ育った方達がイノベーションを起せないのではなく、『機会』を発見出来なかったから起せなかっただけなのです。しかし、地域活性化の事例が増えたことに伴い、どんな視点で自地域を見ることで問題点を発見し、新しい発想を生み出せたのかという情報が増加し、その多くの事例に自地域を当てはめて考えることで、さまざまな角度での客観的視点を得ることが可能になったのです。「よそ者、若者、ばか者」の役割は、情報(事例)で代替される時代に入ってきたのです。

これから地域に必要な人財

先の通り、視点が情報で代替できるようになった現在では、その情報を理解し活用する能力「リテラシー」が求められるようになります。しかし、それは「よそ者、若者、ばか者」と同じ様に、ある種のトレンドのような話で、その時代に合わせて活躍出来る役割が移り変わっていくいうことなのではないでしょうか。地域活性化は一過性の取組みではなく、長期に亘ってその地域に「魅力のタネ」を蒔き育てていくことであり、またその仕組作りのことです。

では、その長期に亘る地域活性化の取り組みにおいて必要な人財とは、どんな人財なのでしょうか。

最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。 唯一生き残るのは、変化できる者である。

この言葉は、ダーウィンの進化論をマーケティング的にアレンジ(誇張)した言葉ですが、環境適応能力が種の存続に大きな影響を与えているということは事実です。これを地域に当てはめて考えてみるとどうでしょう。 変化する環境(社会状況)において、その時に力を発揮出来る人財がその地域に存在しているかどうかが重要なのではないでしょうか。継続的な地域活性化の為には、さまざまな考えや価値観を認め、受け入れ、またそれを奨励し、それぞれの能力を最大限発揮出来る環境の整備が求められているのです。

必要なのは「多様性」あり、それを認め合える環境なのです。

FIT(外国個人旅行者)の増加は、地方創生の大チャンス

激変する旅行形態の変化

インバウンドの主流が団体旅行であった頃は、多言語化したパンフレットやチラシ等を作成し、海外の旅行エージェントへ観光地案内や企画旅行を提案する等の誘客活動が行われてきました。しかし近年、インバウンドは個人旅行へ大きくシフトしてきています。つまりそれは、自地域の存在を知ってもらう相手が、旅行エージェント(特定の旅行会社)から外国人旅行者個人(不特定多数の個人)へ変わることを意味し、その旅行形態の変化は観光業のあり方を激変させるとても大きな変化です。

しかし、この変化は歓迎されるべき変化であり、上手く対応する事で、今まで外国人旅行者に見向きもされなかった地方にとっては、外国人観光客を増やす大きなきっかけとなります。その地域にどんなに魅力的な観光地や施設があったとしても、知ってもらわなければ足を運んでくれることは絶対にありません。今までは日本を紹介する雑誌に載る一部の地域や施設、旅行社が観光ルートに組み易い有名観光地にしか、その存在を知ってもらう権利が無かったかと思うほど、限られた情報源しかありませんでした。しかし、その「知ることの壁」がインターネットにより取り除かれ、各地方と外国人旅行者が繋がれるようになったのです。

外国人旅行者の個人旅行へのニーズの高まりと、インターネットという情報を得ることが出来るツールがそろったことで加速的に個人旅行は増加しています。地方の観光地にとっては外国個人旅行者(以下 FIT)を増やす、まさにビッグチャンスです。

旅行手配方法(国籍・地域別、観光・レジャー目的)

出典:観光庁「訪日外国人の消費動向 訪日外国人消費動向調査結果及び分析」 平成 29 年 4-6 月期 報告書

FITは、どうやって情報を得ているのか。

では、どんな風に世界中の皆さんに自地域の情報を伝えたら良いのでしょうか。

「海外への情報発信はインターネット」そんな漠然としたイメージはあっても、具体的な方法を見つけ情報発信に取組まれている地域は実は少ないのではないでしょうか。インターネットは時間も場所も選ばす、情報の伝達速度も速いです。また、さまざまなメディアとも拡張性も高い為、海外への情報発信はインターネットを使用するのが良いのは周知の事実です。逆に、情報を受け取る外国人の方も「Visa Global Travel Intentions Study 2015(2015年Visa世界旅行意識調査) 」では、旅行全般の情報収集について訪日観光客の91%が旅行の計画にオンラインでの情報源を活用していると回答しており、情報源をインターネット上に求めていることも分かります。

同時に「旅行計画段階におけるツール別オンライン情報の活用」では、訪日観光客は日本人海外旅行客と比べ、モバイルやタブレットの使用率も非常に高くなっています。またwebサイトだけではなく、アプリを使って情報を得ている方が多いことも注目すべきポイントです。海外旅行を検討する時、以前は旅行エージェントの店頭に足を運んで計画を立てていたのが、自宅でPCを使いインターネットで情報を集めるようになり、現在は持ち歩きが可能なスマホやタブレットを使い、旅行へ行きたいと思った瞬間に情報にアクセスしている。そして、より簡単に、より分かり易く旅行計画に必要な情報を収集出来るアプリケーションも使い、それぞれが自分らしい旅を簡単に形作ることが出来る時代に変わってきている事が見てとれます。

世界中の旅行者は、それぞれの興味のある事をインターネットで検索し、思い思いの旅を楽しむ時代へ急速に移り変わってきているのです。しかも先のデータなどから、海外では私たち日本人が考えるよりも早い速度でこの変化が進んでいると考えられます。

Q:あなたはどのツールを使用してオンライン上で情報を収集しますか?
【図1:旅行計画段階におけるツール別オンライン情報の活用】

出典:Visa Global Travel Intentions Study 2015(2015年Visa世界旅行意識調査)

FITとの繋がりで、地方観光のあり方が変わる。

情報の入手先が旅行エージェントだった時は、その担当者の嗜好や考えが旅行先決定に大きな影響を与えていました。担当者は観光情報のすべてを扱う事は当然出来ない為、必然的にもともと知っている有名観光地や営業力(資本力)のある地域など、偏った地域への送客が多くなります。そして、一度案内をしたことのある観光地であれば勝手が分かり、手間やコストも削減出来る為、また別の団体もその観光地へ送客する。その繰り返しで、一部の地域にのみ外国人観光客が溢れ返るようになりました。しかし、これからは「個人旅行」の時代です。各地域がインターネットを使って自地域の魅力を直接外国人個人へ伝える事ができ、同時に外国人も日本独自の文化や体験ができ、より日本らしさに溢れる地方部の情報を待っているのが現状です。政府も観光を通じた地方創生の取り組みを推し進め、さまざまな施策が行われている今こそ、各地域、各店舗、各観光は各々しっかりとした情報発信戦略を立てFITに地方部に足を運んでいただく取り組みを行わなければなりません。

そして、FITの増加には地方の観光地にとって、とても大きなメリットもあります。

FITの大きな特徴の一つは、リピートやフォロワーが増え易いことです。与えられた観光ルートではなく、自身で探して自力で訪れることができた場所には愛着が湧きます。その為、FITはSNSやブログなどで旅行体験を発信する率も高くなっています。自身の興味のある場所に訪れる訳ですから、より多くの人達に体験を伝えたいと思うのは当然です。地方の魅力を伝えるプレゼンターとしての役割も期待できるFITの増加は、地方観光にとって大きな追い風となります。その為、一定数のFITの訪問があった後に、自然と外国人観光客が増えたという事例もあります。しっかりとインターネット戦略や誘客計画を立て、少しでも多くのFITを呼び込めるよう努めることで、リピーターやフォロワーがじわじわと増加していく良いサイクルを生み出すことにも繋がります。

外国人旅行者の団体旅行から個人旅行へのシフトは、地方観光にとっては来訪者数を増やす大きなチャンスです。一朝一夕で地方に多くのFITが訪れる訳ではありませんが、このチャンスを逃さず、今からでも決して遅くはありませんので、観光振興に向けて自らの情報発信しっかりと発信することスタートさせることをおすすめします。