つれづれコラム

忘れてはいけない観光商品の特性(その1)

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商品の販売を検討する際には、顧客や市場、競合などさまざまな要素を総合的に検討しなければなりませんが、何をおいてもまずは「商品そのもの」について良く考え、認識を深めておかなければなりません。その商品がどんな特性を持っているのかを熟知していなければ、誰に売るべきなのか、どこに売るべきなのか、どう伝えたら良いのか等の販売戦略を立てることが出来ないからです。

私たちが扱う「観光」という商品にも特性があります。しかし、そこを十分に理解しないままプロモーションが行われ、効果が得られていない場合がよくありますが、戦略が無いまま行うプロモーションで結果が出ないのは当然です。各観光商品には、地域性や多様性などさまざまな特徴がありますが、すべてに共通する最も重要な忘れてはいけない特性が2つあります。今回はその1つについて考えてみたいと思います。

忘れてはいけない観光商品の特性(その2)

想起と消費のタイムラグ

想起とは「その商品を欲しいと思うタイミング」、消費とは「購入するタイミング」です。観光商品のもっとも大きな特性の一つは、想起と消費の間に非常に長いタイムラグがあるということです。これは誰もが知っているとても当たり前なことです。しかし、この特性があまり重要視されていないのもまた現実です。

「どこかに旅行に行きたいなぁ」と思った日と、実際に旅行に行く日は別です。事前予約を必要とする宿泊商品などでは、行きたいと感じたタイミングと、予約するタイミング、そして実際に宿泊する日はすべてバラバラで、いずれのタイミングにもタイムラグが生じます。このタイムラグは、販売(誘客)戦略を立てる上で極めて重要なポイントです。自地域にある観光地のパンフレットやホームページを作ってプロモーションし、その情報に触れて「あ、行ってみたいな。」と感じてもらったとしても、実際にそれを消費(来訪)する為には、一緒に行く家族や友人とのスケジュール調整、交通情報の確認や予算など、消費に至るまでに決めなければならないことも多く、即消費には至ることが出来ません。重要なのは、そのタイムラグの間にせっかく行きたいと思った感情を忘れてしまうことです。また、情報は上書きされる性質をもっていますので、現代のような日常的にさまざまな情報に触れる社会では、「行ってみたい。」という情報(感情)は、どんどん上書きをされてしまいます。

ドイツの心理学者のヘルマン・エミングハウスは、ヒトはどれだけ記憶したことが頭に残っているか、どれだけ忘れるかということを調べる、下記のような研究を行いました。

「子音・母音・子音」から成り立つ無意味な音節(rit, pek, tas, …etc)を記憶し、その再生率を調べ、この曲線を導いた。結果は以下のようになった。 20分後には、節約率が58%であった。 1時間後には、節約率が44%であった。 1日後には、節約率が26%であった。 1週間後には、節約率が23%であった。 1ヶ月後には、節約率が21%であった。 この一番上のグラフは経過時間ごとの節約率を表している。節約率とは一度記憶した内容を再び完全に記憶し直すまでに必要な時間(または回数)をどれくらい節約できたかを表す割合である。式で表すと (節約率)=(節約された時間または回数)÷(最初に要した時間または回数) (節約された時間または回数)=(最初に要した時間または回数)-(覚え直すのに要した時間または回数)

出典:ウィキペディア 忘却曲線

この研究から分かることは、ヒトは記憶した直後から物忘れを始め、最初は一気に忘れ、次第にゆっくりと忘れるようになること。そして、継続的にその情報に触れることで、記憶の忘却を抑制できるということです。 観光商品を扱う際、この消費までの時間の長さによる「忘れられる特性」を意識したプロモーションを行わなければ、せっかくお金や労力をかけて行ったプロモーションが実を結ばない可能性が非常に高くなります。逆に言えば、消費をするタイミングで情報を与えることが出来れば、来訪の可能性は高まると言えます。

特性を踏まえた具体的なプロモーション方法

  1. 特定の人物に、繰り返し継続的に情報を発信し続ける
  2. 消費するタイミングに合わせてアプローチをする
  3. 消費をするまでの間、忘れないように情報をとっておいてもらう

1.の場合は、Cookie※の保有期間を長く設定し、リターゲティング広告など接触を繰り返す方法などが考えられますが、継続的にコストがかかる為、財源の少ない地方では現実的ではありません。また、2.のように、不特定多数の個人が消費をするタイミングを極めるのも、現実的ではありません。 ※Cookie(クッキー):Webブラウザ内に蓄積される来歴情報。

その為、地方観光地のプロモーションでは、3.をどう実現するのかがプロモーション効果の最大化、そして来訪者数増加のポイントになります。

忘れてはいけない観光商品の特性(その2)

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