つれづれコラム

デスティネーション(目的地)の認識を深めて、誘客方法を考える。

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デスティネーション(destination)は、英語で目的地、行き先です。
JRグループが自治体や地元の観光事業者等が共同で実施する「デスティネーションキャンペーン」は、日本の観光従事者であれば知らない方はいない大型観光キャンペーンで、旅行目的地を商品とした代表的な「デスティネーション・マーケティング」です。今まではこの「目的地」という考え方が、観光を考える為のベースにあり、どの地域や観光地も目的地になる事を目指して誘客活動が行われてきました。しかし、これから観光をビジネスとして考える上で、この目的地の考え方を細分化し、考察を行い、自地域や自社がどこに該当するのか、目的地に対する認識を深めていかなければならない時が来ているのではないでしょうか。

欲求型目的地

従来の標準的なデスティネーション(目的地)の考え方は、これが多いのではないでしょうか。「行きたい、行ってみたい」という欲求に起因する目的地です。 このタイプの目的地を目指す場合は、より緻密なターゲティングを行い、ターゲットの絞込みが必要になります。観光や体験、食など目的はさまざまですが、主たる目的地として選ばれる為には、「行きたい」という衝動を掻き立てる圧倒的な魅力と差別化が必要になります。

これはインバウンドについてのあるアンケート調査ですが、「フルスピード訪日中国人旅行者街頭アンケート調査結果」では、60%以上の方が旅行中に立ち寄る飲食店を決めています。また、日本の何を魅力に感じて旅行に来たか、という質問に対しては30%以上の方が「食事」と答えているのも興味深いです。食事に興味があるのに、決めるのは現地に来てからなのです。旅行中の現在地に応じてお店を選ぶ傾向があると推測されます。また旅行中に飲食店を決める際に43%が「気になってフラッと入る」21%が「看板を見て入る」と答えています。期待はしているけれど、決めるのは成り行き。 このアンケート結果から、多くの場合、飲食店は「欲求型目的地」ではないことが分かります。 自地域や自社が誘客にあたり見込み客の「行きたい!」を引き出し、寄添っているのかを熟考しなければなりません。

出典:フルスピード訪日中国人旅行者街頭アンケート調査結果

必要型目的地

ホテルや旅館などの宿泊施設を利用する訪日外国人観光客が、「どうしてもそこに泊まらなければならない!」という欲求を持って宿泊されるケースはどの位あるのでしょう。多くの場合は、何か別の目的があり、その地域に存在する宿泊先として選ばれているのではないでしょうか。

日本では、ゆっくり過ごしたり、癒しを求めて温泉旅行に行くという文化がある為、「人気の温泉宿に泊まりたい」という、欲求の受け皿として目的地になる場合もありますが、インバウンド(訪日外国人旅行者)については、その文化はありません。観光庁の「訪日外国人消費動向」によれば、「温泉」は、訪日前に最も期待していたことのうち、「日本食を食べる」「ショッピング」「自然・景勝地観光」」に次いで、4番目と高い順位ですが、それは「温泉」であり、宿泊ではありません。単純に「泊まる」と言う商品(行為)が、何百キロ、何千キロ、遠く海の向こうからやってくる主たる目的には、なかなかなり難いのではないでしょうか。しかし、居住地と目的地が離れていればいるほど、宿泊抜きにして観光は成り立ちません。 欲求を高め、満たすことは難しいですが、必要性(泊まらなければならない)が極めて高い宿泊商品は「必要型目的地」と考えるのが良いでしょう。先に挙げた飲食店も、お腹が減るので何か食べなければならないと言う意味で「必要型目的地」と言えます。

段階的目的地

目的地とは出発地がなければ存在し得ません。出発地と目的地はセットで、そこには必ず移動が発生します。そして移動があると言うことは、通過地、経由地が存在するということです。または、観光客がすでに目的地にいる場合は、そこが出発地になり自宅が目的地となります。目的地とは絶対的な存在ではなく、「現在地・今いる場所」が大前提で、そこから移動をして向かう相対的な場所のことなのです。

さまざまな移動手段が存在しますが、移動は必ず時間と共に進行する為、その段階に応じて小さな目的地が生まれ続けていきます。「トイレに行きたいから、次のサービスエリアに寄ろう。」これが段階的目的地です。「成り行き型目的地」と言ってもいいかも知れません。ただ「成り行き」と言っても、漠然とした完全偶発的な成り行きは実は少ないものです。朝6時に朝食を食べたから正午近くにお腹が減るのです。 とてもシンプルな事ですが、出発地と目的地、経路が分かれば、時間を逆算するとこで意図的に段階的目的地を作りだす事が可能になります。

まとめ

目的地は、観光客の数、そしてサービスや価値を提供する側の数だけ存在します。また、1回の旅や旅行の中で1つではありませんし、出発前に決めるものだけでもありません。自身の地域や観光地、店舗やサービスが、目的地としてどんな役割を担い、観光客のニーズやウォンツとどう適合するのかを良く考えたプロモーションが求められています。
いずれのタイプの目的地としても「知ってもらうこと」は重要ですが、「知ってもらい方」「知ってもらうタイミング」も合わせて検討しなければ、今後の誘客は難しいものになるでしょう。

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